最近は、イクメンや母子手帳ならぬパパ手帳といった言葉が流行ったり、男性の育児休暇の取得など男性の育児参加を促す機会が増えてきました。ですが、実際にはまだまだ女性が子育てのほとんどを担っているのが現状です。
また、男性も子育てに参加したいと思っていても、何をどのように手伝えばいいのか戸惑っている方や、子育ては女性が主におこなうものと考えている方もまだ多いのではないでしょうか?
女性の社会進出や少子化などの社会問題を解決するためには、男性の意識改革や夫婦で協力する子育ての形は欠かせません。今、日本社会がすべき「子育て」とはどうあるべきかを一緒に考えてみたいと思います。
女性が妊娠・出産するということ、妻の心と体はどう変化するの?
男性にとって、女性が妊娠や出産によってどう変化するのかを理解するのは難しいと思います。例えば、妊娠中の妻が急にイライラしたり、感情の急変に戸惑った経験をした方もいるのではないでしょうか。また、大きくなっていくお腹がどれくらいしんどいものか想像ができないという方は多いと思います。
女性の体は、まだ妊娠を意識する前の受精、着床の頃から急激な変化が起きています。女性が妊娠してから子育ての時期まで、体と心がどのように変化するのか是非知っておいてください。
【妊娠~出産、子育て中の母体の心身の変化】
妊娠週数 | 赤ちゃんの様子 | 身体の変化 | 心の変化 | 夫への想い |
---|---|---|---|---|
~妊娠3週 | 受精 | まだ変化はない | 妊娠するかしら? | うまくタイミングが取れて嬉しい! |
妊娠4~7週 (妊娠2か月) |
着床~妊娠の判明 | ホルモンが変化、つわりが出始める | ・妊娠が分かり嬉しい ・流産が気になる ・つわりは大丈夫かしら |
妊娠を一緒に喜んで欲しい |
妊娠8~11週 (妊娠3か月) |
・胎盤の形成 ・赤ちゃんの重要な器官ができる時期 |
・つわりがピークとなる (吐き気、匂いに敏感になる、だるいなど) |
・一日中つわりが辛い、しんどい ・赤ちゃんにまで気気持ちがいかない |
・家事が辛い ・つわりの辛さを分かってほしい ・イライラして夫に当たってしまうことも |
妊娠12週~19週 (妊娠4~5か月) |
・胎盤の完成~安定期へ ・赤ちゃんの手足や身体がどんどんできあがる |
・つわりが落ち着いてくる ・体調がよい日が多い ・腰痛が出る人も |
・胎動が分からないので赤ちゃんの成長が心配になる ・気分がよい日が多い |
・赤ちゃんの性別について話したり、夫婦で赤ちゃんの話しをすることが嬉しい ・安定期に入れば夫婦生活を再開する人も多い |
妊娠20~27週 (妊娠6~7か月) |
・赤ちゃんらしい体型になってくる ・性別も判明 |
・お腹が大きくなって姿勢が悪く動きにくい ・腰痛が強くなる |
・胎動がしっかり分かって嬉しい、母親になる実感が少しずつ沸いてくる | ・体を気遣ってくれると嬉しい ・夫にお腹を触ってもらい赤ちゃんのことを想うと幸せを感じる |
妊娠28~40週 (妊娠8、9、10か月) |
どんどんと成長し、脂肪もつきはじめふっくらとする | ・お腹がさらに大きくなり息切れを感じることもある ・貧血や腰痛がひどくなる |
・赤ちゃんにもうすぐ会える喜びを感じる ・出産に不安を感じることも多い ・体がしんどく動くのが辛い |
・動きが鈍くなることや、体の辛さを分かって欲しい ・赤ちゃんの誕生を楽しみにして欲しい |
出産 | 初産婦:約半日かけて誕生 経産婦:6~8時間かけて誕生 |
強い陣痛が起こる (強い下腹痛、腰痛、陰部の灼熱感) |
・陣痛が辛い ・早く生まれて欲しい ・元気に生まれて欲しい |
・夫に側にいてほしい ・一緒に頑張って欲しい ・疲労や辛さでイライラをぶつける |
産後~4か月 | 2~3時間おきに授乳 | ・疲労や睡眠不足がピークになる ・産後の回復途中で体がしんどい |
・ホルモンの変化で気分の浮き沈みが激しい ・眠たくてしんどいが赤ちゃんはかわいい ・母性が強くなる |
・労いの言葉をかけて欲しい、気にかけてほしい ・ミルクやおむつ交換など積極的にして欲しい ・仕事から早く帰ってきて欲しい ・夫婦生活を拒否する人が多い |
産後5か月~ | ・寝返りなどできることが増えてくる ・生活リズムがつき始める ・離乳食の開始など |
・赤ちゃんの世話には慣れてくるが、疲れが溜まり始める ・家事や育児でいっぱいいっぱいになることもある |
・赤ちゃんのちょっとした成長が気にかかる ・1人になりたい、ゆっくり寝たい ・ストレスの蓄積 |
・悩みや赤ちゃんのことをきちんと聴いて欲しい ・パパとしての自覚を持って欲しい ・おむつ交換や抱っこも積極的にして欲しい ・赤ちゃんを可愛がってくれると嬉しい |
いかがでしたか?女性が妊娠や出産をする時期というのは、心身共に大きな変化が起こります。また、産後は、体の回復が戻らないまま慣れない育児がスタートするので、さらに心身への負担が大きくなります。
そんな中、女性自身、自分の体や心の変化についていけず、夫にイライラしたり、どうして分かってくれないの?と思ってしまうことが多くなるのが特徴です。
日本の育児の現状、パパは育児参加できている?
では、妊娠や出産によって大きく変化する女性を男性は支えることができているでしょうか。実際の日本の男性の育児参加の現状を見てみましょう。
厚生労働省の調査によると、男性の育児休暇取得率は平成8年で0.12%→平成16年で0.56%→平成23年で2.63%と推移しています。一方で女性の育児休暇取得率は平成8年で49.1%→平成16年で70.6%→平成23年で87.8%となっています。
また、厚生労働省の平成20年度の調査によると育児休暇を利用したいと考えている男性の割合は31.8%で、女性は68.9%でした。
これらの調査から分かることは、男性の育児休暇取得率は徐々に増えてはいますがまだまだ少ないのが現状であり、また、育児休暇を取得したいと考えている男性が3割程度いるにもかかわらず、実際の取得には結びついていないということも分かります。
さらに、育児休暇を希望する人の割合に男女差がかなりあることから、同じように働いていてもまだまだ「育児は女性がおこなうもの」という認識が強いということも分かります。
では、実際に男性がおこなう育児や家事の時間はどうなっているでしょうか。内閣府の男女共同参画白書による「6歳未満の子どもがいる夫の家事・育児の時間の国際比較」を見てみると以下のようになっています。
6歳未満の子どもがいる夫の家事・育児の時間の国際比較
国の名前 | 家事の時間 | 育児時間 |
---|---|---|
日本 | 1時間 | 0.33時間 |
アメリカ | 3.13時間 | 1.05時間 |
イギリス | 2.46時間 | 1時間 |
ドイツ | 3時間 | 0.59時間 |
スウェーデン | 3.21時間 | 1.07時間 |
ノルウェー | 3.12時間 | 1.33時間 |
この結果から、日本は他国と比べても家事や育児をおこなう時間がかなり少ないことが分かります。
また、内閣府による「夫婦の家事・育児の分担割合」についての調査を見てみると、第1位が夫1割で妻が9割、第2位が夫2割で妻が8割、第3位が夫3割で妻が7割、第4位は妻が10割となっています。この結果からも、家事や育児はほとんどが女性がおこなっていることが分かります。
女性が望む男性の育児参加とは?
では、女性が望む男性の育児参加はどのようなものなのでしょうか。まず、女性が育児にどんなストレスを感じているのかを見ていきましょう。
子育て・育児支援の【こそだて】が2005年におこなった「女性が育児に感じるストレス」調査
女性が育児でストレスを感じること | 割合 |
---|---|
自分の自由時間・睡眠時間が取れない | 42.3% |
しつけについて | 27.7% |
いつまでも寝ないでぐずる | 25.5% |
泣き止まない | 21.2% |
離れられない・まとわりつき | 17.8% |
遊び相手になること | 11.6% |
離乳食について | 10.8% |
おむつ交換・処理 | 4.0% |
授乳について | 3.8% |
お風呂 | 3.3% |
このアンケート結果から、子育て中に女性が感じるストレスは、おむつ交換やお風呂、授乳など育児そのものについてのストレスというより、睡眠や休みなど1人でゆっくりする時間がないことや、時間の使い方を自分で決められないというストレスが大きいことが分かります。
つまり、子どもがいなかった頃は、仕事や家事などである程度、時間のしばりはあったものの時間の使い方を自分なりに構築し仕事や家事をこなすことができました。ところが、子育てが始まると、自分の疲労や気持ちは全て後回しで、睡眠や食事、トイレなど生理的な欲求も全て削って子育てに費やし休む時間がほとんどないということが大きなストレスとなっているのです。
実際に助産師外来に相談に来られるママ達の声もご紹介します。
朝から1日ずっと子どもと二人きりなのが辛い。夫が休みの日も子どもと夫だけでは、子どもが大泣きしてしまい結局、私がいないとダメ・・・最近は子どもが昼も夜もあまり寝てくれず、体力的に疲れているのが分かります。
本当は専業主婦になる予定でしたが、夫から金銭的な理由で仕事復帰して欲しいと言われています。でも夫は毎日仕事で帰りが遅く、子育てや家事は全て私1人でして当然という態度。仕事復帰したら家事に子育てに仕事にと両立ができるか心配で・・・。
1人で孤軍奮闘するママの悩みがよく分かると思います。一方で、パパが少しでもママのフォローをしてくれることで、助けられている事例もあります。
高齢出産で体力もなく、もともと神経質な私で子育てにも一生懸命になりすぎます。今回も授乳でうまくいかないと悶々としていましたが、そんなときいつも夫が「大丈夫!ミルクでもちゃんと育つから!」と考え方を修正してくれます。そんな夫が私の支えです。
妊娠中~産後はイライラすることが多かったですが、旦那が子どもを可愛がってくれるのが嬉しい。特に子育てをしてくれるわけではないけど、毎日早く帰ってきてくれて、何かあれば車を出してくれたり、妊娠中の私を労わってくれる旦那が有難いです。2人目も産もうと思えました。
いかがでしたか?現在の日本の男性の育児参加の現状と女性が抱える育児へのストレス、夫への育児参加への本音を見てみると、現状、女性が今、一番男性に願っていることは、育児に奮闘する女性の気持ちに共感して欲しい、気持ちを共有して欲しいということなのです。
そして次に、女性が1人でゆっくりする時間、眠る時間、食事をする時間が少しでも取れるよう手伝って欲しいということです。これは、おむつ交換できる、お風呂に入れることができるという単純な作業を手伝うということではありません。
パパと子どもが2人だけで過ごすことができるということです。例えば12時~15時まではパパと子どもの2人だけで過ごし、この間の子どもの食事、おむつ交換、お遊び、昼寝などはパパが1人でおこなうということです。
具体的なパパの育児参加、パパができること
STEP①:「今日もありがとう」と毎日伝える
どんなに忙しくても、どんなに不器用なパパでも簡単にできる育児参加です。毎日、ママに「今日も1日ありがとう、ママもお疲れさまでした」と労いの言葉をかけてあげてください。パパももちろん疲れていますが、1日中、子育てに奮闘していたママも疲れているのは一緒です。
夫婦がお互いを思いやって、大切な我が子を育てていきたいという気持ちを共有できることは、子育てに参加する大きな一歩となります。ママは、パパの些細な言葉で明日も頑張ろうと思えるのです。
STEP②子どもと妻にきちんと関心を持ち、それを言葉にする
女性は夫が我が子に愛情を持ってくれていると感じるととても喜びを感じます。また、自分と我が子に関心を持ち、愛情を持ってくれていることを感じるととても安心します。子育てを手伝う時間がなくても、いつも家族を大切にしているということを言葉にしてくれるだけで、妻の子育てはとても楽になります。
例えば、仕事の休憩中に電話で「○○(子ども)はどうしてる?」と連絡を入れたり、妻に「体調はどお?休憩は取れそう?」と声をかけるだけでもいいのです。
STEP③仕事が終わったらすぐに帰る、自分のことは自分でする
子どもが小さい間は目が離せず、1日中、子どもを見ていないといけないのでかなりストレスとなります。そんなとき、夫がただ横にいるだけでも子育ては楽になります。仕事が終わったらなるべく早く家に帰ってあげてください。
また、なるべく自分の食事、食事の後片付けなど自分のことは自分でやってくれるとママは助かります。ママが子育てだけに専念できるようサポートすることも子育てを手伝うことになるのです。
STEP④パパ担当の役割を見つける(お風呂、ミルク作り、寝かしつけなど)
次のステップはいよいよ実際の子育てのお手伝いです。器用なパパならここまでのステップはすぐにできるようになります!できるなら、“これなら俺に任せろ”という子育てを一つ見つけてください。
つまり、妻の子育ての手伝いではなく、パパがメインでできるものがあるとママはとても楽です。お風呂や寝かしつけ、遊び相手など何でもよいでしょう。どうしても時間的に余裕がないなら、日曜日の子どものお風呂と食事はパパが担当などと決めてもよいでしょう。
STEP⑤ママがいなくても子どもと2人で過ごせる
最後のステップはママがいない時間、子育ての全てができることです。最初はママが美容院に行っている間、買い物に行っている間など短時間から始めます。その間は、子どもが泣かずに(もしくは泣いても)パパと過ごすことができ、おむつ交換や食事、昼寝もパパがしてくれると、ママは安心して休むことができます。安心して我が子を任せられることは、ママの子育てを数倍楽にしてくれます。
パパにも知ってほしい!子育ての楽しさや喜び
これまで女性の育児の大変さについてお話ししてきましたが、子育ては大変なことばかりではありません。女性が全ての欲求を犠牲にしてまで子育てができるのは、何事にも変えられない喜びや楽しさ、嬉しさを感じることができるからです。
男性も育児参加をすることによって、育児の大変さだけでなく、喜びや楽しさもママと共有できるようになります。育児の喜びは、ママだけのものでなくパパにも味わう権利があります。ぜひ、ママを楽にしてあげたいという気持ちだけでなく、男性も育児を楽しみたい!という気持ちで育児に参加をして欲しいと思います。